望月志乃の ひびわれたまご|ADHD主婦

大人の発達障害(ADHD)当事者のイラストレーター望月志乃が、生きづらさや”楽”について考えるブログ。

【続・大人の発達障害と精神科の内情】寄せられた反響に対する精神科医からのコメント〜重度患者の現実〜

どうも。発達障害界の松岡修造を目指す女・望月志乃です。 

blog.shinoegg.com

先日の、現役の精神科医から寄せられた「成人発達障害者に対する、精神科のリアル事情」に関する記事について、本当にたくさんの反響をお寄せいただきました。

おかげ様で、アクセスランキング入りを果たすなど、当初の狙いである「1人でも多くの発達障害者に届けたい」という目的が達成されたように思います。

本当に、ありがとうございました。

今回はその反響を受けまして、当ブログに内部事情を告白してくださった精神科医(以下:A医師)からコメントを頂きましたので、あわせてご覧ください。

Q:今回の記事への反響について、どのように感じていますか?

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まずは、ブログランキング15位、おめでとうございます。

あの記事の内容は、私が患者に伝えたかったけれど、立場上、伝えられなかった内容でしたので、記事が多くの方の目に触れたのはとても嬉しいです。

Q:「内部告発」は言い過ぎではないでしょうか…

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私が直接、望月さんとメールをやりとりした時点では、実際に勤務した有名病院の名前を、挙げていました。

その上で、具体的な内容を記載していましたが、掲載時には内容について、ぼかすようお願いしました。そのため読者からすると「内部告発?」となってしまったのかなとは思います。この点についてはブログで上記内容を記載していただいても結構です。

Q:記事でお勧めされていた「精神保健指定医」と「日本精神神経学会専門医」の資格について詳しく教えてください。

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(精神保健)指定医と、(日本精神神経学会)専門医、どちらも持っている医師は外れがないというのは間違いないのですが、実際のところ、両方とも持っている先生は多くはないです。

私見ですが、専門医(持っていると「しっかり勉強している」という証拠)だけ持っている医師は、“ちゃんとしてるけど、お金に執着がない”か、“たまたま指定医に必要な症例が来なかった”か、“要領が悪いか”で、診療能力はあるように感じます。

しかし、専門医だけのパターンはあまりないです。

精神科は、指定医の有無で年収が決まるので、みんな目の色を変えて指定医の資格をとります。(同じ仕事をしてても、数百万ほど年収が変わります。)

指定医(患者の意志に関わらず強制入院させる資格。法律的な意味合いが強い)だけ持ってる医師も、しっかりしていますし、要領がいい人が多いです。

どちらも初期研修修了後、3年間精神科で勤務しないと取れない資格なので、とっていればその医者は安牌と考えていいと思います。

Q:「発達障害は病気のグループの総称」という表現について、追記で「病気とするかどうかは専門家によって見解が異なる」という注釈がついていましたが…

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広汎性発達障害というグループの中で、さらに“特徴から疾患名が細分化される”ということを伝えたかっただけで、発達障害の方を侮辱する意図はありませんでした。

ご指摘するご意見が寄せられたということで、誤解を招く表現をしてしまい、読者を傷つけてしまったと反省しております。

広汎性発達障害についても、ICD-10DSM-5(統計によって分類された診断基準のこと)、どちらの分類を使用するかによって、診断名が変わってきます。

医師の中でも、どちらを基準にカルテに記載するかするかは好みなので、これらの分類に、実はそれほど大きな意味はありません。診断優先か臨床優先か、ぐらいのものです。

Q:同じ発達障害でも、重度か軽度かによって、大分話が違ってくると思うのですが…

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お伝えするのは心苦しいですが、発達障害という分類の含意は広く、軽症例から重症例まで症状に幅があります。

知能的には問題なく特出した能力を持ちながら、得意不得意の差が激しいために、生きづらさを感じているような患者もいます。そのような場合、得意な事を生かせる環境や、習慣を整える事で素晴らしい能力を発揮できる方もいらっしゃいます。

ですが、そうではない患者に関しては、そうもいかない現実があるのも確かです。 

Q:「重度の発達障害者」の現実について教えてください。

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まず、重度の発達障害の患者については、一目でそれとわかる顔貌や振る舞いをしている方がほとんどです。また、WAISにて、あらゆる能力が平均値より低く、言葉は悪いですが「生きているだけで周りに迷惑をかけ続け、自らも苦痛を感じ続けている」ような患者もいます。

公共の場で自慰行為を行い射精してしまう患者、電車や通路で排便してしまう患者、自宅や隣家のガラスを叩き割る事をやめられない患者、死ぬ死ぬ詐欺を繰り返した後実際に致死レベルの自殺未遂をする患者…。

いずれも警察沙汰になりますし、改善を見込めず何十年も苦しみます。ここまでではなくとも、努力しても社会復帰の見込みがない患者は多数います。

Q:記事中で、入院するレベルの患者についてのお話もありましたが…

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重度の発達障害であれば、死ぬまで施設から出られないような方が多いのですが、中等度以上であれば、入所する施設も少なく、社会に放り出されている患者が多数います。

病院にはいつまでもいられるわけではなく、主治医でなくなった後のことを、把握することはできません。

過激な迷惑行為を繰り返す患者の行動は、定型発達から見れば、とても理解・受容できるものではないと思います。コメント欄に記載があったような「前を向けない」ほど重症な方も少なくない数がいらっしゃいます。 

Q:記事にあったような「薬で大人しくさせる」という処置がされることに、ショックを受けています。

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例えば、周囲の方からも話を聞き「迷惑行為が度を過ぎている。やめろと言っても聞かない。何とかして欲しい」等と言われてしまうと、「この患者は薬漬けにして、動けなくさせるのが現状ベストなのではないか」と考えてしまいます。

本来、患者自身も周囲に迷惑をかけることを望んでないでしょう。

ただ、患者を「物言わぬ人形」のようにしてしまうことに、葛藤もあります。私としても、何とかして治療してあげたいですが、現状ですと、新薬に望みを託すしかありません。

 ここからは、このブログ「ひびわれたまご」の記事に関するご意見にも、ご回答いただきました。

Q:「このブログで提唱されていること(患者がありのままであることを認めること)が許されるような人間ばかりではない」という、重度の発達障害者のご家族からの指摘もありました。

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望月さんがブログで提唱しているように、本人が前向きになることで「迷惑」の度合いが増えてしまう場合もあります。

そういった方には「お前に鎮静をかけて穏やかにする薬を使う。お前は病気だからわからないだろうけど、気ままに振る舞うことで周りに迷惑がかかるんだ。薬を飲めば自分も傷つかなくていいだろ?前科もつかないし」との内容を言葉を選んで説明し、薬剤調整を行います。

それでも過激な迷惑行為が収まらず、ご家族の希望で、病院を変え、何度も薬剤調整を重ねても、全く改善する気配がなかった患者もいました。

最終的に、犯罪を犯さないレベルまで薬剤増量し、専門病院へ転院としました。被害を受けた方から理解を得ることは、難しいと思います。

Q:ASDの私には「ひびわれたまご」の記事が参考になりません。

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拝読した限り、「ひびわれたまご」の記事については、軽度〜中等度の発達障害の患者(主にADHD)については参考になると思いますが、全ての発達障害に当て嵌まるものではないとも感じました。 

Q:「自信を持って前向きになろう」と言っても、全ての発達障害者には当てはまりませんし、そんな単純なことではないと思います。

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私は自分の治療目標として「自傷他害をさせない」「患者に前科をつけない」「初診時よりもよくする」「より良い人生を送ってもらう」に重点を置いてます。

ただ、前科をつけないだけでやっとの患者も多いです。そこまでなら簡単ですが、それ以上を望めない患者もいます。

Q:望月志乃は恵まれているので、分からないのだと思います。

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望月さんのように、文章で人を楽しませ、勇気付けることができるのは素晴らしいことです。これは私の私見ですが、ブログの写真を拝見し顔立ちが整っているとも感じました。医療現場では、そうではない方が大半です。

前述のように、「環境を整えたり、生活習慣を改善することで、本来の能力を発揮する」ことができる軽度〜中度のADHD患者がいる一方で、重度の発達障害患者には、残念ながら当てはまらない現実もあると思います。

「望月さんのブログは多くの患者の支えになっている」というのは嘘偽りない本心です。

ただ、もしかするとコメントを寄せている方の中には、重度の患者を想定した上で「発達障害でも前向きに」というのは当てはまらない、と考えている方がいるのではと思いました。

しかし、望月さんの熱意には感銘を受けておりますし、発達障害を理由に後ろ向きになる必要は全くないと常々考えております。

ありがとうございました。

おわりに|望月志乃が思うこと

いかがでしたでしょうか。「発達障害には個人差があり、全ての人に当てはまるわけではない」ということや、「発達障害という括りではなく、1人1人の状況と、それぞれの特性を見て欲しい」ということを、このブログでも繰り返し記事にしてきました。

発達障害には、個人差がある。

そして、その幅はとても大きい。

これまで、この「ひびわれたまご」では、「全ての発達障害者と、その関係者のご迷惑にならないような記事を書きたい」と配慮を重ねてきたつもりですが、それら全ての方の立場を想像するにも限界がありました。

実際のところは、実際の患者を多数診ていらっしゃる医師や、ご家族にしか分からないことが、沢山あるのだと思います。

ここ最近の記事は、自分に限界があることを悟り、1人でも元気になってくれる当事者がいればいいという気持ちで、全ての患者やその家族に読んでいただくことを想定していない記事を中心に書いています。

いつの間にか、私はずいぶん「発言力と影響力のある人間」と見なされる存在になってしまったようで、そんな私の発言を脅威に感じたり、悪影響を及ぼすのではないかと、心配になった方も多かったのだと思います。

私が、1人で出来ることには限りがあります。

私はADHDであり、おそらく恵まれている側の人間です。

私がどんなに想像力を働かせても、知り得ない世界がきっとあるのでしょう。

ただ、私がこのブログから投げかけた言葉たちが、静かな水面に投げた石のように、小さな波紋を生み、色んな方のお力を借りながら、どんどん波を広げ、A医師のような関係者に、良い波、良い影響を届けられればと考えています。

私に書けることは、どう頑張っても「自分に近しい方々」についてのことだけなのだと思います。「全ての方には当てはまらない」ということも、自分なりに合わせて伝えてきたつもりでしたが、残念ながら、あまり伝わっていなかったようです。

だからこそ、「違う、わたしはそうじゃない!恵まれたあなたと一緒にするな!」という批判が殺到するくらいで、このブログはバランスが取れるのかもしれません。

「ひびわれたまご」をご覧の当事者、そしてその関係者の皆さん、どうかご自身の言葉でも、発信をしてください。

私がこのブログを始める前は、「ADHD当事者であり母親」でもあるという立場から情報発信している方は、誰もいませんでしたし、関連書籍も1冊しか存在しませんでした。「当事者とその関係者が、堂々と発言できる環境を作りたい」というのも、当初の願いの一つです。

 

私は、私の立場から、水面に石を投げることしかできません。

あなたの石は、あなた自身で投げてください。

私は私で、自分に出来ることをします。

 

そうしてできた波と波がぶつかり合って、より大きな輪になっていくことを、願っています。